竹澤恭子さん&川本嘉子さんが語る!新春のMCO公演に向けて

Kyoko Takezawa & Yoshiko Kawamoto ©Michiharu Okubo

音 楽

2017 01 05

竹澤恭子さん&川本嘉子さんが語る!新春のMCO公演に向けて

皆さまあけましておめでとうございます!

新春のコンサートホールATMを華やかに彩るのは、小澤征爾総監督とともにお届けする水戸室内管弦楽団第98回定期演奏会&ミューザ川崎シンフォニーホール公演です。この第1部でお届けする、モーツァルトの名曲「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」は、これまで数々の名演奏家たちが素晴らしい演奏を残しています。今回ソリストとして登場するのは、いまMCOが世界に誇るメンバー、竹澤恭子さん(ヴァイオリン)と川本嘉子さん(ヴィオラ)。このコンサートに向けて、10月の定期演奏会のゲネプロ後、お二人にお話を伺いました。実はこの二人、桐朋学園高校の同級生でいらっしゃるとか…!また、マエストロ小澤と出逢った高校時代の秘話など、貴重なエピソードをたっぷりお話くださいました。

■竹澤さんと川本さんは、これまでご共演されたことは…?

川本:実はあまりなかったんですよね。

竹澤:そう、室内楽で少しあるくらい。でも機会があればぜひと思っていたので、今回ご一緒させていただけることが決まり、こういうメジャーな曲を弾かせていただけることになって「やった!」という感じでした。

川本:私もですね。実は恭子さんとは桐朋女子高校の同級生なんです。それに私は名古屋出身で、竹澤さんもそう。3歳くらいから私もスズキメソードでヴァイオリンを習っていたので、その頃から恭子さんのことは雲の上の存在として知っていました。今回の共演は、もう光栄の極みという感じです(笑)。

■モーツァルトの〈ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調〉について、これまでの思い出や聴きどころについて教えていただけますか?

川本:私がこの曲を初めて弾いたのは、桐朋学園大に通っていた頃で、当時はヴァイオリンを弾いていました。学校のオーケストラでたくさん練習して、すごく勉強させてもらった曲です。でも実はそのとき「ヴァイオリンってなんか弾きにくい」と思っていたの。変ホ長調という調性って、倍音の関係で、ヴァイオリンが一番響きにくいんですよね。モーツァルトはそれを知っていて、自分は初演でヴィオラを弾いたという話もあるんです。ヴィオラはニ長調で記譜されていて、変ホ長調にするためにヴィオラの弦を通常より半音高く調弦すると、ヴィオラはもっと多く倍音が共鳴して豊かに響く。この曲は、ヴァイオリンの大嫌いな人から委嘱されたっていう逸話もあることを考えると…面白いですよね(笑)。私も、この曲を最初に弾いた時、ヴァイオリンは弾きにくいから、「いつかヴィオラを弾いてみたい」と思っていたんです。2回目にこの曲を弾いた時には、ヴィオラに転向していました。…まぁヴィオラはヴィオラで弾きにくいんですけどね(笑)。

竹澤:チューニングは高くして弾くの?

川本:私はかえないようにしてる。昔、ヴァイオリンの豊嶋泰嗣さんと弾いた時、本番で弦を切っちゃって。やっぱり弦のテンションが強くなるんですよね。だから普通の調弦で、変ホ長調で弾きます。

竹澤:調弦をかえる場合、フィンガリングも全部かわるの?すごく混乱しそう。よくできるわね!やったことないけど…(笑)。

川本:楽譜をずっと見ていないと分からなくなるから本当にこわい(笑)。でも音はすごく大きくなる。だから倍音がいかに大事かということを、モーツァルトは知っていたのよね。

竹澤:私は、この曲は今までに一回くらいしか弾いたことがないんです。でも好きな曲ですし、機会があればいつか弾きたいなと思っていました。この曲は、ヴァイオリンとヴィオラのやりとりが対等に書かれていて、音楽を一緒に作っていけるので、そこでどう生き生きした演奏ができるかにかかってきますよね。2015年の第93回定期演奏会では、水戸でモーツァルトのヴァイオリン協奏曲 第5番を弾かせていただいてとてもいい経験になりましたが、今回もモーツァルトの作品なのですごく楽しみですし、いい演奏ができたらと思っています。

川本:あと、他の作曲家が書いた協奏曲よりもオーケストラが重要な役割を果たしていると思います。例えばヴィオラはパートが4つあって、それを4人のメンバーが分担して弾かなきゃいけないから結構大変。この曲は、どのパートを弾いても面白い曲だと思うし、お客様には、聴いているだけでも湧き上がってくる何かを感じてもらえると思います。

 ■オーケストラも重要ということで、今回は水戸室内管弦楽団(MCO)との共演ですね。

川本:やはり名手の集まりで、小澤さんが信頼している方ばかりだから、お任せするだけですね(笑)。

竹澤:このオーケストラとの共演ならではの演奏の良さが出せるのではないかな。

川本:そうね。ああしてほしいこうしてほしいではなくて、皆さんが好きにやっていただいて、それが集まってきたところで、すごくいい音楽ができるのではないかと思って、それが楽しみです。皆さんそれぞれ積み重ねてきた音楽体験が違うから、出てくる音楽も違いますよね。小澤先生がいらっしゃる時はそれをまとめてくださるんですけど、この曲にはモーツァルトの力があるから、曲がまとめてくれると思います。だから大船に乗ったつもりでいますよ。それに変ホ長調はモーツァルトが好きな調性だから、それだけで音楽にパワーがあるんですよね。

竹澤:このオーケストラの良さって、それぞれの方の個性もありますし、いつもは違う場所で活躍されている方たちが集まったときに出る力が、また素晴らしいんですよね。この曲はシンフォニーの要素もあるから、そういう方向も出していただきながら集まれると、いい音楽ができると思います。

■近年、マエストロ小澤とは継続してベートーヴェンの交響曲に挑んでいますね。

川本:小澤先生というと、私はベートーヴェンの交響曲第7番というイメージがあるんです。ベートーヴェンの音楽って、ある衝撃的なテーマが出てきて…例えば誰もが思い浮かべる〈運命〉とかね。ある特定の和音やリズムがくり返し出てきて、「まだやるの?」というくらいの執拗さがありますよね(笑)。そういう音楽を演奏する時でも、回を重ねる毎に、小澤先生の表現力の高まりを感じるんです。例えば水戸で2回本番があって、そのあと別の場所でもう1回本番があると、さらにまた新たなエネルギーがいただける。小澤先生は、ただ音楽をまとめて表現する指揮者ではなく、音楽の根底にある大事なエネルギーをいつもくださる方なので、とても感謝しています。音楽のピュアな力を小澤先生からいただくことの喜び、それが水戸に来る一番の楽しみです。ベートーヴェンの交響曲第1番は、ベートーヴェンとしてはまだ比較的おとなしいというか、柔らかいし優しいから、そういう面を小澤先生から与えていただくのもまた楽しみです。

竹澤:私は水戸に来させて頂くようになってまだ日が浅いですが、小澤先生といえば今でも思い出すのが、高校生の時のこと。小澤先生が桐朋のオーケストラの授業にいらしてくださったことが時々あって、オケの空気がわっと変わるのを凄まじく感じました。そして最近、実際に接する中で一番印象的なのは、あの本番での緊張感ですよね。その中から出てくるエネルギーを改めて痛感し、大きなものをいただきながら毎回演奏していて、すごく刺激をいただいています。

川本:小澤先生が、教室の後ろから「ちょっと俺やってみようか」と言いながら入ってきて、オケの授業をジャックするみたいなこと。あの衝撃を高校生で体験できたのって私たちの世代だけなのよ。あの3年間くらいだけ。

竹澤:それはラッキーだったわね!

まさに運命的な出逢いですね!第1部、第2部ともに、今回の演奏会を楽しみにしております。
 

20161029日(土)

聞き手:高巣真樹 (水戸芸術館音楽部門学芸員)


■水戸室内管弦楽団 第98回定期演奏会
2017年1月13日[金]19:00開演、15日[日]14:00開演
会場:水戸芸術館コンサートホールATM
【出演】
指揮:小澤征爾(ベートーヴェン作品のみ)
ヴァイオリン:竹澤恭子
ヴィオラ:川本嘉子
【曲目】
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364(320d)
ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 作品21

■水戸室内管弦楽団 川崎公演
2017年1月17日[火]19:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

takasumaki
makit@arttowermito.or.jp