“世界のメゾ”藤村実穂子が、小澤征爾と水戸芸術館の思い出を語る!

音 楽

2018 02 09

“世界のメゾ”藤村実穂子が、小澤征爾と水戸芸術館の思い出を語る!

小澤征爾さんと水戸芸術館の個人的な思い出
藤村実穂子

高校生の頃、小澤征爾さんの「僕の音楽武者修行」が放送になるというので、家族でテレビの前に集まり録画をしながら見た。世の中には日本人でありながら海外で、しかも海外の音楽で成功する人がいるんだと、眼で知る良い機会だった。

やがて芸大に合格し東京暮らしが始まった。ヘルマン・プライさんが来日して歌曲の夕べを開くというので、東京と水戸芸術館でのチケットを買い車で水戸まで走った。

時は随分経ったけれど、今でも私の部屋の入り口には繰り返し見過ぎてヘロヘロになった「僕の音楽武者修行」と書いたVHSカセットが置いてある。「その」小澤征爾さんと初めて共演させて頂く事となった。しかも思い出の水戸芸術館で、である。

ご一緒させて頂いて分かったのだけれど、小澤さんの指揮はとてもよく喋る。しかも命令形でなく「ねぇ、こうしようよ」「ここ、こうしない?」といった、お誘いである。お客さんとの距離が近い水戸芸術館で、360度開放された小澤さんの世界へと、客席も舞台も関係なくそこにいる皆が誘われ、世界を共有するうちに、ふと涙していた。それは感傷でなく、極めて劇的な感動の大嵐でもない。海辺に独りで座っていると干潮だったのが、知らないうちに満潮になり足元が濡れていた。そんな、今までにない体験だった。

私にとって歌曲はいつも特別だった。歌手の小宇宙だと思っている。個人的な思い出が詰まった水戸芸術館で、客席の皆様と何かを共有出来たら、と、今から楽しみにしている。

※写真は、2017年10月水戸室内管弦楽団第100回定期演奏会より(撮影:大窪道治)

(水戸芸術館音楽紙vivo 1+2月号より転載)

 

sekinetetsuya
tetsuya@arttowermito.or.jp