今昔雅楽集 七夕の宴 オススメのCDと本をご紹介

コントルポアン 雅楽コーナー

音 楽

2018 07 03

今昔雅楽集 七夕の宴 オススメのCDと本をご紹介

7月7日(土)の夜は雅楽の演奏会「今昔雅楽集 七夕の宴」。いよいよ今週末です。
今年はいつになく早く梅雨が明けてしまい、暑い日が続いていますね。
七夕は旧暦では秋のお祭り(旧暦の7月は秋!)になりまして、今回演奏される朗詠(雅楽の歌曲)〈二星(じせい)〉の歌詞にも「涼風颯々(りょうふうさつさつ)の声」という言葉が出てきますが、涼風が恋しい新暦7月の今日この頃です。

さて、今週末の公演に向けて、水戸芸術館のショップ「コントルポアン」でも雅楽コーナーが充実してきました! 今回ご出演の伶楽舎のCDをはじめ、日本の雅楽を牽引してきた芝祐靖氏(伶楽舎音楽監督)の本、雅楽の入門盤やちょっと珍しい現代作品のCDも。どうぞお立ち寄りください♪

この雅楽コーナーからオススメは何かと聞かれたら、まず挙げたいのは、今回演奏される〈秋庭歌〉を収録した伶楽舎『秋庭歌一具』のCD(ソニー・レコーズ SICC 85)。〈秋庭歌一具〉は、〈秋庭歌〉(1973年作曲・初演)の前後に5曲を加えて組曲に仕立てた1979年の作品。「一具」は英語では“Complete Version”と訳されています。

〈秋庭歌〉のレコードとしては、1974年録音の宮内庁楽部の演奏、それから、〈秋庭歌一具〉としては東京楽所の演奏(1980年録音)がありますが、これらの旧盤に対して、2001年録音のこの伶楽舎の演奏は、ぐっとテンポを落としたアプローチをとっています。

伶楽舎は、結成10年を迎えた1995年の10月に明治神宮で〈秋庭歌一具〉を演奏しました。その演奏を聴きに来た武満徹氏は、テンポが速いことを指摘したそうです(本CDのライナーノート、および国立劇場による芝祐靖氏へのインタビュー記事参照)。この武満氏の指摘を踏まえて、2001年のこの録音では、テンポを落として「秋庭歌に内包された自然観と詩情の追求」(本CDのライナーノートより)を試みたのでしょう。その抒情性の高い表現が高い評価を得て、このCDは発売の翌年に芸術祭レコード部門優秀賞を受賞しました。

そもそも伶楽舎の音楽監督である芝祐靖氏は、もともと宮内庁の楽人として〈秋庭歌〉と〈秋庭歌一具〉の初演に参加し、この作品との出逢いがきっかけで、より豊かな演奏を目指して、1984年に宮内庁を退官、翌年に伶楽舎を結成したといいます。〈秋庭歌〉はいわば伶楽舎の原点とも言える作品。そして、2001年録音の〈秋庭歌一具〉のCDは、伶楽舎のひとつの到達点と言えるでしょう。

芝祐靖氏の活動について知るには、寺内直子氏編著の本『伶倫楽遊――芝祐靖と雅楽の現代』(アルテスパブリッシング、2017年)が好著。少年時代から宮内庁を経て独立、現在までの活動をまとめた芝祐靖氏の評伝です。この本の「はじめに」で次のように書かれています。

「芝は、戦後の雅楽の歩みのほとんどすべてに、大なり小なり関わっており、その軌跡は、そのまま現代の雅楽の歴史と重なる。換言すれば、芝の活動はすでに個人の域を越え、時代を画するひとつの「できごと」の様相を呈しており、その出現以前と以後では、雅楽の様態や社会におけるあり方自体が変わったのである。」(p. 3)

この記述がまさにそのとおりと、読んでいて納得される内容。芝祐靖氏の活動をとおして、戦中~戦後~現在までの雅楽の歴史を見渡すこともできる本となっています。巻末収録の芝祐靖氏のエッセイも面白く、作品目録、文献リストなどのデータ、索引も充実してます。

循環するシルクロード実行委員会 編『甦る古代の響き』というCDシリーズの「箜篌(くご)」「方響(ほうきょう)」の2枚(ALM ALCD-2002、ALCD-2003)も面白いCDです。
箜篌と方響は、どちらも正倉院に収蔵されている古代の楽器。現行の雅楽では使われませんが、今回の演奏会ではその復元品が〈曹娘褌脱〉で登場します。
古代楽器に興味をお持ちでしたらこのCDを。収録曲は、石井眞木氏や一柳慧氏による現代曲ですので、現代音楽ファンにとっても興味をかき立てるCDではないでしょうか。古代楽器による現代曲という古くて新しい曲!が聴けます。
伶楽舎のCDではありませんが、録音に参加している演奏家のなかには、伶楽舎のメンバーの方も加わっています。CDのプロデューサーは、今回の演奏会のためにエッセイをご寄稿くださっている、国立劇場元演出室長の木戸敏郎(文右衛門)氏です。

古代楽器を使った音楽でも、もし現代曲より古い時代の音楽の復元演奏にご関心をお持ちでしたら『敦煌から正倉院へ――復元楽器・シルクロードの音楽』というCD(DENON COCJ40016)がオススメです。芝祐靖氏が復曲した4曲を、正倉院復元楽器で演奏したCD。今回の演奏会で演奏される〈曹娘褌脱〉のほか、日本最古の「天平琵琶譜」の音楽(番假崇)や敦煌琵琶譜に伝わるシルクロードの音楽(急胡相問)が聴けます。
ちなみに〈曹娘褌脱〉、「娘が褌を脱ぐ」と読める曲名ですが、卑猥な音楽ではありません(この珍妙な曲名のせいで早くに廃絶したのでは、とも……)。〈褌脱〉は一説によれば、動物の縫いぐるみを着て舞ったユーモラスな踊りなのだそうです。(この項、7月7日加筆)

 


今昔雅楽集 七夕の宴<公演情報>

今昔雅楽集 七夕の宴
https://www.arttowermito.or.jp/hall/hall02.html?id=1460

7/7(土) 16:30開場 16:45プレトーク 17:00開演
会場 水戸芸術館コンサートホールATM
全席指定 一般3,500円 ユース(25歳以下)1,000円

出演 伶楽舎

演目
芝 祐靖 復曲・構成:露台乱舞
芝 祐靖 復曲:曹娘褌脱 より (正倉院復元楽器版)
宮田まゆみ:滄海
武満 徹:秋庭歌

篠田 大基
篠田 大基
hshinoda@arttowermito.or.jp

音楽部門学芸員