水戸室内管弦楽団 第102回定期演奏会 宮田大さんインタビュー

水戸室内管弦楽団 第83回定期演奏会より

音 楽

2018 10 08

水戸室内管弦楽団 第102回定期演奏会 宮田大さんインタビュー

10月19・21日(金・日)に開催する水戸室内管弦楽団(MCO)第102回定期演奏会
先日ブログにアップした竹澤恭子さん(ヴァイオリン)へのインタビューに続いて、ソリストへのインタビュー第2弾をお届けします!
カバレフスキーのチェロ協奏曲第1番でソリストを務める宮田大さんへのインタビューです。

若手チェリストのなかで屈指の人気と実力をもつ宮田さんに、今回の演奏曲であるカバレフスキーのチェロ協奏曲第1番の魅力を、たっぷり語っていただきました。宮田さんにとってこの曲は、子どもの頃から好きな、とても思い入れのある曲なのだそうです。
インタビューを読んでいただければ、きっとコンサートがさらに楽しみになるはず……! チケットは好評発売中です!


 

水戸室内管弦楽団第102回定期演奏会に向けて
宮田大さん(チェロ)インタビュー

 

――前回、水戸室内管弦楽団(MCO)とコンチェルトを共演されたのは、2012年の第83回定期演奏会で、曲はハイドンの〈チェロ協奏曲第1番〉でした。今回が2回目の共演となりますが、お気持ちをお聞かせください。

宮田:2012年ですから早いものでもう6年前のことになります。小澤先生指揮のMCOとハイドン作曲〈チェロ協奏曲第1番〉をソリストとして共演させていただいて以来、今回の演奏会まで小澤先生並びにMCOからは実に沢山の経験をさせていただきました。あっという間に過ぎ去ってしまった年月ですが、この間に得たアイディアや経験は、かけがえのない宝物として私の中にストックしてあります。私にとってMCOは「帰って来るべき場所」という思いがあります。楽団のみなさんとその宝物の引き出しをいろいろ開けていき、その時々の旬の音楽を作り上げられたらと思います。

――今回、カバレフスキーの〈チェロ協奏曲第1番〉でMCOとどんな音楽を作っていこうとお考えですか?

宮田:スコアを見ながらMCOのことを思い浮かべたら、いろいろとやってみたいアイディアがあふれてきたんです。大きな音を伝えるというよりは、チェロの繊細な、むせび泣くような声を聴かせたいし、曲が終わった後の無音の時間も大切にしたいので、もしスコアにpp(ピアニッシモ)と書いてあったら、p(ピアノ)をもう一つ加えるような、そのくらい繊細な方向に仕上げていきたい気持ちがあります。MCOで聴いたことがない「最弱音」を、今回出演するメンバーで出してみたいです。「最強音」は去年の〈第九〉(第100回定期演奏会)で出たと思うので、今度は本当に耳を澄まさないと聴こえないくらいの音を目指したいです。この前、第2楽章を聴いていたら最後に涙が出てきて……、すごくきれいな曲なんです。

――宮田さんのこの曲との出会いについて教えてください。

宮田:小学生のときにCDで聴いて、とても好きになった曲でした。その頃はロシアについての知識は全然なくて、好きか嫌いかという基準だけで音楽を聴いていたので、音楽と国とが結びついていなかったのですが、なぜかその頃から、曲を聴いてグレーの重たい空を思い浮かべていました。第2楽章では雲の間から光が差し込んでくるようなイメージも持っています。今回はヴィヴァルディの〈四季〉も演奏するので何だかこじつけのようですが、第2楽章にはロシアの夏から秋にかけての雰囲気を感じます。日本のようなセミが鳴いている風景ではなくて、ロシアならではの季節感ですね。

この曲はずっと好きで、まだコンチェルトをオーケストラと弾いたことがない頃から弾きたいと思っていて、高校に入ったときに倉田澄子先生にカバレフスキーを教えてくださいとお願いしたのですが、「まだあなたには早いわよ」と言われて、それからもずっと「おあずけ」が続いていました。初めて演奏会で弾いたのは2010年で、ダン・エッティンガーさん指揮の東京フィルハーモニー交響楽団さんとでした。それからいろいろなオーケストラと演奏してきましたが、指揮者なしは今回が初めてです。

――子どもの頃から現在まで、ずっとお好きな曲なんですね。

宮田:自分にとってはカバレフスキーだけでなくて、ロシアの音楽全般がそうかもしれませんが、聴くたびに曲に感じる色合いや自分の解釈が違ってくるんです。たとえば涙を流している人がいたとしたら、どうして泣いているのかという一連のストーリーが常に変わるような感じです。誰かに嫌なことを言われて悲しいのかと思っていたら、優しく励まされて嬉し涙を流していたというふうに。曲のなかに、喜怒哀楽の矛盾した感情が入り混じっているんでしょうね。いろいろなものが混じり合って協奏曲になっているわけなので、自分が一所懸命に弾いているときにも、オーケストラが背景になってしまわないでほしいと思います。

――指揮者なしでは宮田さんにとって初挑戦のカバレフスキーですが、リハーサルと本番に向けての意気込みをお聞かせください。

宮田:この曲は、音楽を聴けば、目指す方向はきっと指揮者がいなくても皆一致する曲だと思います。もちろん自分の好きな方向に進めていきたい気持ちはありますが、オーケストラの方も、それぞれの人が感じる音量や和声感で演奏してもらえたら嬉しいです。コンチェルトはソリストが派手に、華やかになりがちですが、この曲ではそれとは真逆を行きたいんです。テクニックを見せるのとは違った、チェロらしい歌心をお聴かせたいです。オーケストラもソロの背景になるのではなくて、こちらが訴えかけたら応答があって、対話が生まれたらいいなと思います。MCOとこの曲を演奏できるということは、私にとって特別なことですし、だからオーケストラのメンバーそれぞれが音楽から感じたことが、ソロの背景にならずに現れてほしいです。

今回は残念ながら小澤先生との共演はありませんが、必ずやこの楽団の底力で素敵な演奏会になるものと信じています。とても身近に音を感じることができて、演奏家の息づかいまで聴こえる水戸芸術館にお運びいただき、今しか聴けない、今しか味わえない演奏会に出会っていただけたら嬉しいです!

2018年9月
聞き手:篠田大基


 

宮田 大(チェロ)

宮田大

宮田大 ©Daisuke Omori

1986年生まれ。宇都宮市出身。3歳よりチェロを始め、幼少より出場するコンクールのすべてに第1位入賞を果たす。第9回ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで日本人として初優勝。国内の主要オーケストラはもとより、パリ管、フランクフルトシンフォニエッタ、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィル、スロヴァキア・フィル、プラハ放送響などと共演。小澤征爾、エリアフ・インバル、リン・ハレル、ギドン・クレーメル、ユーリ・バシュメット、マキシム・ヴェンゲーロフ、オーギュスタン・デュメイ、ハインツ・ホリガーや日本を代表する多くの演奏家・指揮者と共演している。リサイタルではサントリーホールなど2000席以上のホールを満席にしている。
水戸室内管弦楽団団員。使用楽器は1698年製ストラディヴァリウス「シャモニー」(上野製薬株式会社貸与)、1710年製M. ゴフリラー(宗次コレクション貸与)。


 

<公演情報>

水戸室内管弦楽団 第102回定期演奏会
https://www.arttowermito.or.jp/hall/hall02.html?id=1484

10/19(金) 19:00開演 10/21(日) 18:00開演
会場 水戸芸術館コンサートホールATM
全席指定 S席¥7,000 A席¥5,500 B席¥4,000 ユース(25歳以下)¥2,000

曲目
ストラヴィンスキー: 組曲〈プルチネッラ〉
カバレフスキー: チェロ協奏曲 第1番 ト短調 作品49
チェロ独奏:宮田 大
ヴィヴァルディ: 協奏曲集 作品8 〈和声と創意の試み〉から 第1~4番 RV269, 315, 293, 297〈四季〉
ヴァイオリン独奏:竹澤恭子

篠田 大基
篠田 大基
hshinoda@arttowermito.or.jp

音楽部門学芸員