【ATM便り】フランコ・ファジョーリ&ヴェニス・バロック・オーケストラ

音 楽

2018 11 18

【ATM便り】フランコ・ファジョーリ&ヴェニス・バロック・オーケストラ

11月25日の「フランコ・ファジョーリ&ヴェニス・バロック・オーケストラ」に関する記事が、茨城新聞の「ATM便り」に掲載されましたのでここに転載いたします。

 


ATM便り 2018年11月15日

3オクターブの歌声

 

カストラートの声を一度でもいいから聴いてみたい、と思っている人も多いのではないでしょうか。

カストラートは去勢された男性歌手のことで、17~18世紀に主にイタリアで隆盛を誇りました。変声期の前に去勢してしまうため、成人しても喉はほぼ少年の時のまま残ります。それ故、ボーイソプラノの声質を保ちつつ、男性的な力強さが兼ね備わり、また音域も3オクターブ以上という広い範囲をカバーしていたと言われます。

映画の主人公にもなったファリネッリをはじめ花形歌手たちがその声を競い合い、社会現象と言ってもいいほどに貴族たちはカストラートの声に熱狂しました。ひとたび人気が出れば、高額の報酬が約束されたため、親の都合で去勢されてしまう少年も多かったようです。逆に、ボーイソプラノとして美声を誇っていたハイドンは、周囲の期待に反して、父親により去勢を止められたそうですが…。

18世紀末になると、去勢手術の人道的な問題が指摘され、イタリアに遠征したナポレオンが禁止令を出すなど、カストラートは急速に廃れていきます。オペラの舞台からは締め出され、教会の中で細々と存続していたカストラートですが、1902年に教皇レオ13世が「カストラートを永久に追放する命令」に署名したことにより、その歴史に幕を閉じました。

最後のカストラートと言われるアレッサンドロ・モレスキが20世紀初めにSP録音を残しています。しかし、その声は盛期を過ぎたものであり、カストラート本来の歌声はやはり想像するしかなかったのです。

しかし、21世紀に入り、「カストラートの再来」と評されるカウンターテナー歌手が何人か出現しました。フランコ・ファジョーリはその中でも最高の一人です。

カウンターテナーは、変声後の男性がファルセットを使って女性の音域を歌うため、カストラートとは本質的に異なります。

しかし、ファジョーリの声には、カウンターテナー歌手に時折聴かれる不自然な響きはありません。3オクターブにも及ぶ広い音域に独特の甘い声が実に自然に鳴り響き、聴く者を完全に陶酔させます。カストラート華やかかりし時代が、水戸芸術館のホールによみがえって来そうです。

(水戸芸術館音楽部門主任学芸員・関根哲也)

 


<公演情報>

フランコ・ファジョーリ&ヴェニス・バロック・オーケストラ
http://www.arttowermito.or.jp/hall/hall02.html?id=1491

11/25(日) 16:00開演
会場 水戸芸術館コンサートホールATM
全席指定
一般¥7,000 ユース(25歳以下)¥2,000

曲目
ヴィヴァルディ:シンフォニア ト長調 RV146
Vivaldi: Sinfonia in G major for strings and basso continuo, RV146

ヘンデル:歌劇《オレステ》HWV A11より オレステのアリア
“激しい嵐に揺さぶられても”
Handel: ‘Agitato da fiere tempeste’ from the opera Oreste, HWV A11

ヘンデル:歌劇《イメネーオ》HWV41より ティリントのアリア
“もしも私のため息が”
Handel: ‘Se potessero i sospir miei’ from the opera Imeneo, HWV41

ヴィヴァルディ:コンチェルト ト短調 RV156
Vivaldi: Concerto in G minor for strings and basso continuo, RV156

ヘンデル:歌劇《リナルド》HWV7より リナルドのアリア
“愛しい妻、愛しい人よ”
“風よ、暴風よ、貸したまえ”
Handel: ‘Cara sposa, amante cara’
‘Venti, turbini, prestate’ from the opera Rinaldo, HWV7

ヘンデル:歌劇《ロデリンダ、ロンバルドの王妃》HWV19より ベルタリドのアリア
“あなたはどこにいるのか、愛しい人よ?”
Handel: ‘Dove sei, amato bene?’ from the opera Rodelinda, Regina de’Longobardi, HWV19

ヘンデル:歌劇《忠実な羊飼い》HWV8より ミルティッロのアリア
“私は胸にきらめくのを感じる”
Handel: ‘Sento brillar nel sen’ from the opera Il Pastor Fido, HWV8

ヴィヴァルディ:歌劇《ジュスティーノ》RV717より シンフォニア ハ長調
Vivaldi: Sinfonia in C major from the opera Il Giustino, RV717

ヘンデル:歌劇《アリオダンテ》HWV33より アリオダンテのアリア
“嘲るがいい、不実な女よ、情人に身を委ねて”
Handel: ‘Scherza infida, in grembo al drudo’ from the opera Ariodante, HWV33

ジェミニアーニ:コンチェルト・グロッソ ニ短調
(コレッリのヴァイオリン・ソナタ〈ラ・フォリア〉作品5の12による)
Geminiani: Concerto grosso in D minor (after Corelli’s Violin Sonata, Op.5-12 La follia)

ヘンデル:歌劇《セルセ》HWV40より セルセのアリア
“恐ろしい地獄の残酷な復讐の女神が”
Handel: ‘Crude furie degl’orridi abissi’ from the opera Serse, HWV40

 

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音楽スタッフ水戸芸術館
水戸芸術館 音楽スタッフ
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